もしかして、お子さんが学校の勉強で苦労していたり、あるいはあなたご自身が「どうして自分だけこんなに苦手なんだろう」と感じていらっしゃるのではないでしょうか。
頑張っているのに結果が出ない、周りと同じようにできない・・・そんな日々は、本当につらいものですよね。
でも、ここで一つお伝えしたいことがあります。それは「努力が足りないわけでも、能力が低いわけでもない」ということです。
たとえば、小学3年生のユウタくんは、算数の計算問題になると急に手が止まってしまいます。2桁の足し算でも、何度練習しても時間がかかり、間違えてしまう。
でも、社会科の授業では歴史の出来事を細かく覚えていて、クラスのみんなを驚かせるほど。
あるいは、中学生のアヤさんは、教科書の文章を読むのに人の3倍の時間がかかります。でも、友達の話を聞いて内容を理解する力は抜群で、いつもクラスのまとめ役です。
こうした「得意なこと」と「苦手なこと」の差が極端に大きいとき、それは学習障害(LD)かもしれません。
学習障害は、脳の情報処理の仕方に特性があるために起こるもので、決してやる気や知能全体の問題ではありません。
文字を読むこと、書くこと、計算すること。私たちが当たり前のようにしているこれらの作業が、脳の特定の部分の働き方の違いによって、とても難しく感じられるのです。
まるで、右利きの人が左手で字を書くような感覚、と言えばイメージしやすいでしょうか。
日常で感じる困りごと
学習障害のあるお子さんや大人の方が日常で経験する困難は、とても具体的です。
たとえば読字障害(ディスレクシア)のある方は、「b」と「d」の区別がつきにくかったり、文章を読んでいるうちに行を飛ばしてしまったりします。ノートを見返しても、自分が何を書いたのか判読できないこともあります。
書字障害(ディスグラフィア)では、頭の中では文章が浮かんでいるのに、それを紙に書き出すことが極端に難しい。漢字のバランスが取れなかったり、マス目からはみ出してしまったり。
算数障害(ディスカルキュリア)のある方は、数の大小の感覚がつかみにくく、「347」と「374」のどちらが大きいか瞬時に判断できないことがあります。時計を読むのが苦手だったり、お釣りの計算に時間がかかったり。大人になってからも、予算管理や時間配分で困ることがあります。
こうした困難を抱えながら、「もっと頑張らないと」「自分はダメな人間だ」と自分を責めてしまう方がたくさんいます。でも、それは違います。
あなたやお子さんは、人一倍努力してきたはずです。ただ、その努力が報われるための「適切な方法」に、まだ出会っていないだけなのです。
なぜ学習障害が起こるのか
ここからは、学習障害がなぜ起こるのか、もう少し専門的な視点から見ていきましょう。学習障害は、脳の特定の領域における情報処理の違いによって生じます。
具体的には、文字の視覚情報を処理する部分、音韻(言葉の音)を処理する部分、数量を認識する部分などに、神経学的な特性があると考えられています。
遺伝的要因も関係していることがわかっており、家族内で学習障害が見られることは珍しくありません。お父さんが子どもの頃に漢字が苦手だった、お母さんも算数で苦労したという話は、単なる偶然ではない可能性があります。
また、脳の発達過程における微細な違いも関与しているとされ、これは妊娠中や出生時の環境要因が影響することもあります。
重要なのは、学習障害は知的発達全体の遅れではないということです。IQ(知能指数)は平均的、あるいはそれ以上であっても、特定の学習領域だけに顕著な困難が現れます。これを「ディスクレパンシー(乖離)」と呼び、診断の重要な基準の一つになっています。
学習障害の種類と具体的な症状
学習障害は大きく3つのタイプに分けられます。
**読字障害(ディスレクシア)**は、文字を読むことの困難です。
具体例として、小学生のケンジくんは、「はし」という文字を見ても、それが「箸」なのか「橋」なのか「端」なのか、文脈から推測するのに時間がかかります。音読では単語を飛ばしたり、勝手に言葉を補ったりしてしまいます。黙読していても内容理解が追いつかず、テストで時間切れになることがよくあります。
**書字障害(ディスグラフィア)**は、文字を書くことの困難です。
中学生のミサキさんの場合、頭の中では作文の構成ができているのに、実際に書き始めると文字の形が崩れ、どこに何を書いたか自分でもわからなくなります。漢字の書き取りテストでは、何度練習しても同じ漢字を間違え、筆圧のコントロールも難しく、ノートはぐちゃぐちゃになってしまいます。
**算数障害(ディスカルキュリア)**は、数の概念や計算の困難です。
小学生のタクヤくんは、「5+3」のような簡単な計算でも指を使わないとできず、九九もなかなか覚えられません。文章題になると、何を問われているのか理解できず、どの計算をすればいいのか見当がつきません。時計の長針と短針の意味も混乱してしまいます。
判定とチェックのポイント
学習障害かどうかを判断するには、専門的な評価が必要です。まず、以下のようなサインが複数見られる場合は、専門機関への相談を検討してください。
読みに関しては、文字を一つ一つ拾って読む、行を飛ばす、似た文字を間違える、読むスピードが極端に遅い、読んだ内容を理解していないといった特徴があります。
書きに関しては、鏡文字を書く、漢字の部首が入れ替わる、マス目に収まらない、筆圧が一定しない、書くことを極端に嫌がるなどです。
算数では、数の大小が理解できない、繰り上がり・繰り下がりができない、九九が覚えられない、図形の理解が困難、時間や量の感覚がつかめないなどが挙げられます。
診断は、教育センター、児童発達支援センター、小児神経科や児童精神科などで受けられます。WISC(ウェクスラー式知能検査)などの標準化された検査を用いて、能力のプロフィールを詳しく調べます。
診断を受けることで、お子さんの困難が明確になり、学校での合理的配慮や適切な支援につながります。
効果的な支援と対応方法
学習障害は「治す」というよりも、「適切な方法で学ぶ」ことで困難を軽減できます。読字障害に対しては、音読を強制せず、タブレットの読み上げ機能を活用する、ルビ付きの教材を使う、行間を広げたプリントで学習するなどの工夫が有効です。
大学生のリョウさんは、電子書籍の音声読み上げ機能を使うことで、専門書も理解できるようになりました。
書字障害には、パソコンやタブレットでの入力を許可する、口頭での回答を認める、板書をコピーして渡すなどの配慮が役立ちます。
社会人のアキコさんは、職場で会議の議事録をICレコーダーで録音し、後でゆっくり文字起こしする許可をもらうことで、仕事がスムーズになりました。
算数障害には、具体物を使った学習、図やイラストの活用、電卓の使用許可、十分な時間の確保などが効果的です。中学生のハルトくんは、計算は電卓を使い、数学的思考力を問う問題に集中することで、数学の楽しさを見出せるようになりました。
参照元サイト:LD学習障害の症状・原因・治し方【判定チェック】
前向きに歩むために
学習障害があっても、それは個性の一つです。著名な俳優、起業家、科学者の中にも、学習障害を公表している方がたくさんいます。彼らは、自分の得意な能力を最大限に活かし、苦手な部分は適切なツールや支援で補いながら、素晴らしい成果を上げています。
大切なのは、早期に気づき、適切な支援につなげることです。そして何より、本人が「自分はダメだ」と思い込まないこと。
学習障害があるあなたも、学習障害のあるお子さんも、かけがえのない価値ある存在です。
できないことではなく、できることに目を向け、一歩ずつ、自分らしい学び方を見つけていきましょう。
あなたは一人ではありません。
理解し、支えてくれる人が必ずいます。

