お金を生きがいにしていいのだろうか？
それとも、どこかで間違っているのだろうか？
そんなふうに考えてしまって、胸の奥が少し苦しくなることはありませんか。もし今、この文章を読んでいるあなたがそうなら、まず伝えたいことがあります。その悩みを持っている時点で、あなたはとても誠実で、人生を大切にしようとしている人だということです。
お金を大切に思う気持ちと、人としての価値は別物です。
それなのに、多くの人は無意識のうちに、その二つを結びつけてしまいます。だからこそ「お金を目標にしている自分は浅いのではないか」「心が貧しい人間なのではないか」と、自分を責めてしまうのです。
この文章では、正解を押しつけることはしません。ただ、少し心が軽くなる視点と、「今の自分でも大丈夫なんだ」と思える安心を、そっと手渡すような気持ちでお話ししていきます。
お金に違和感を覚えてしまうのは自然なこと
私たちは子どもの頃から、「お金より大切なものがある」「お金に執着するのは良くないことだ」という言葉を、何度も耳にしてきました。だから、大人になってお金を強く求めるようになると、心のどこかでブレーキがかかってしまうのです。
その一方で、現実の生活ではお金がなければ成り立たない場面があまりにも多いですよね。家賃、食費、医療費、将来への備え。お金が足りないだけで、不安や焦りが一気に押し寄せてきます。そのギャップが、「お金を生きがいにしていいのか」という葛藤を生み出します。
この違和感は、あなたの心が弱いからでも、欲深いからでもありません。むしろ、理想と現実の両方をちゃんと見ているからこそ生まれる、とても人間らしい感覚なのです。
人生にはお金を優先してもいいステージがある
お金を生きがいにすることは、良いか悪いかで単純に判断できるものではありません。なぜなら、人生にはいくつものステージがあり、それぞれで必要な価値観が違うからです。
たとえば、生活が不安定な時期や、将来が見えず不安でいっぱいな時期。そんなときに「まずは稼げるようになりたい」「お金の不安をなくしたい」と思うのは、とても自然なことです。その段階では、お金は欲望ではなく、安心を得るための手段です。
雨風をしのげない場所で暮らしている人に、「心の豊かさを大切にしよう」と言っても、なかなか響きませんよね。まずは安全な場所を確保する。それと同じように、お金を目標にする時期は、心を守るために必要な時間でもあるのです。
お金は安心を支える土台になってくれる
お金があることで得られるものは、贅沢だけではありません。一番大きいのは、「選べる」という感覚です。体調が悪いときに無理をしなくていいこと、嫌な環境から離れる選択肢があること、それらはすべて心の余裕につながります。
たとえば、明日の生活費を心配しながら眠る夜と、最低限の蓄えがある状態で眠る夜では、心の緊張がまったく違います。その差は、想像以上に大きなものです。
だから、お金を生きがいにすることは、決して浅い目標ではありません。それは「安心して生きたい」という、とても切実で、誰にでもある願いなのです。
お金だけでは満たされなくなる瞬間もある
ただし、正直にお伝えすると、ある程度安定してくると、心の中に小さな変化が起きることがあります。収入が増え、生活が落ち着いたとき、「これでずっと満たされるのだろうか」と、ふと立ち止まる瞬間が訪れるのです。
それは、お金を大切にしてきたことが間違いだったというサインではありません。むしろ、そのステージをしっかり生きたからこそ、次の問いが生まれるのです。
人の心は不思議なもので、安心が満たされると、今度は「意味」や「つながり」を求め始めます。この変化は、成長の一部でもあります。
生きがいは一生同じでなくていい
ここで大切にしてほしいのは、生きがいは一生固定されるものではない、という考え方です。若い頃はお金、次は仕事のやりがい、そして人とのつながり。そうやって変わっていくのは、ごく自然な流れです。
今、お金を中心に生きている自分を、未来の自分が否定する必要はありません。その時その時の自分にとって、何が一番必要だったのかを、ただ認めてあげるだけでいいのです。
人生は長く、価値観は何度も形を変えます。その柔らかさを持っていることこそ、実はとても強いことなのです。
お金を目標にしている今の自分を責めないで
もしあなたが今、「お金を生きがいにしている自分は未熟なのではないか」と感じているなら、その考えを少しだけ緩めてみてください。あなたは怠けているのでも、逃げているのでもありません。
必死に安心を求め、未来を守ろうとしているだけです。その姿は、責められるものではなく、むしろ労わられるべきものです。
この先、価値観が変わる日が来ても、来なくても大丈夫です。
今のあなたが選んでいる道には、ちゃんと意味があります。
どうか、自分自身に優しくあってください。